2026/06/26 19:00
ずっと真夜中でいいのに。のライブは、スペクタクルな体験だ。徹底したコンセプチュアルな演出で、別世界に連れていかれる。ブラウン管ドラムや扇風琴などオリジナルな楽器も駆使した、他に類を見ないアンサンブルが鳴らされる。ファンクもロックも歌謡も咀嚼した、強度ある楽曲が畳み掛けられる。その真ん中に、ACAねの歌がある。
6月2日、神奈川・Kアリーナ横浜にて筆者が観たずとまよのステージも、目を丸くするような瞬間が沢山あった。でも、今回のツアーは大掛かりなステージセット、スペクタクルな空間演出で圧倒するようなものとは、ちょっと違っていた。コンセプトは死生観にも通じる奥深いもの。そして、最終的に伝わってきたのは演出や世界観の仕掛けよりも、ACAね自身が抱える生々しい思いだった。
アジア含む世界11都市を回るジャパン&アジアツアー【ZUTOMAYO INTENSE II「坐・ZOMBIE CRAB LABO」】の一環として行われた今回の公演。ツアータイトルが表すように、今回のライブのキーワードは「ゾンビ」だ。開演時刻を回ると、海辺の岩場の光景が映し出されたビジョンを背景に、ゾンビに扮したメンバーが登場する。舞台は遠い未来。人類が死滅してゾンビだけが生き残った世界に「伝説のロリータ艦長」ACAねを復活させる、という筋書きだ。呪文を唱えると、センターステージに棺桶がせり上がり、蓋が開くとドレスに身を包んだACAねの姿がある。
ACAねは棺桶の中に寝そべったまま1曲目「形」を歌い、ライブがスタート。曲の途中で音を止め、立ち上がり、ギターを抱え、マイクに向かい「ずっと真夜中でいいのに。です」と告げる。大歓声が上がったドラマティックなオープニングから、序盤は「勘ぐれい」や「残機」などアップテンポなナンバーを連ねる。強力なグルーヴの演奏が繰り広げられ、否応なしに熱気が高まっていく。一方で、背景には深海へと潜っていくような映像が映し出される。ただ盛り上がるだけでなく、不思議な世界に引き込まれていくような体感だ。
ACAねは、この日のライブを「腐敗と再生の儀式」と言っていた。そのもうひとつのキーワードは「CRAB」。つまり「カニ」だ。「時にはカニみたいに横に進んでもいいんじゃないかと思います。ステレオワイドに広がったっていいと思う」と語り、新作アルバム『形藻土』から「蟹しゃぶふぁんく」も披露された。
「LABO」、つまり「研究室」の要素もふんだんにあった。いくつかの曲では、ステージでゾンビが大きな壺をかき混ぜるなど、ゴシックホラーのような演出もあった。SF的な映像もあった。そして、そういうビジュアル的な世界観の演出だけでなく、そもそも音楽の実験精神に満ちているのがずっと真夜中でいいのに。のライブの魅力だ。それぞれの楽曲のアレンジはレコーディング音源とは異なり、曲間のインタールードでは多彩なセッションが繰り広げられる。中盤の即興演奏にも目を見張った。「地獄のゲート」にゴルフボールを転がし、3つのゲートのどこを通るかで演奏曲が決まるという仕掛けで、この日にセレクトされたのは「君がいて水になる」。ACAねがメンバーに「中華喫茶のワンオペ」など予想もつかないキーワードを伝え、そのイメージをもとにアンサンブルが組み立てられていく。
そして後半は、音楽そのものの興奮に貫かれるような展開だった。「秒針を噛む」など初期の代表曲から、口琴の音がアクセントになっている『形藻土』収録の「海馬成長痛」など、躍動感たっぷりのアンサンブルを繰り広げ、客席もライブ定番アイテム「しゃもじ」を打ち鳴らし一体となる。ブラウン管ドラムに加えて、「アンチモン」でACAねが叩いたウォータードラムなど、独自のパーカッションが唯一無二のグルーヴを生み出す。ファンクであり、ニューウェイブであり、ポストパンクであり、そのどれでもない独自のサウンドだ。「踊れんの!?」とACAねが煽った「あいつら全員同窓会」ではオーディエンスが身体を揺らしボルテージもさらに上がる。
終盤の「間人間」からの流れも印象的だった。MCでACAねは、自身の繊細で傷つきやすい内面を語りつつも「殻はもう壊していいと思う」と思いを吐露していた。「人類が死滅してゾンビだけが生き残った世界」というホラーやファンタジーの世界観を持つライブだったけれど、そこからは、ACAね自身のメッセージが伝わってくるような感触があった。ラストに披露した「メディアノーチェ」も感動的だった。ハイトーンの歌声に、胸に迫る迫力があった。
「また共に生きていきましょう」と最後にACAねは挨拶し、ステージを降りた。殻を壊し、更新を続けていく。それこそがずっと真夜中でいいのに。の真髄なのだと思えた一夜だった。
Text by 柴 那典
Photo by 鳥居洋介
◎公演情報
【LEGACY ZOMBIE LABO「文禍伝雷」奈良・平城京】
2026年10月10日(土)、11日(日)
奈良・平城宮跡歴史公園 中央区朝堂院 特設野外会場
OPEN 15:30 / START 17:30
チケット:
Standard Area 12,000円(tax in.)
(ブロック指定スタンディング/整理番号付)オリジナルラバーバンド付き
Premium Area Upgrade + 3,000円(tax in.)
(ブロック指定スタンディング/整理番号付)オリジナルラバーバンド付き
後方 Free Area 6,500円(tax in.)
後方 Free Area(奈良県民割)5,500円(tax in.)
※雨天決行/荒天中止
※未就学児入場不可
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